小嶋ウィメンズクリニック

富山市の産婦人科,(不妊症) 小嶋ウィメンズクリニック

〒930-0887 富山県富山市五福521-1
TEL 076-432-1788
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培養室だより

   胚の培養
 
 


 前回の培養室だよりでは、前核の確認による正常受精胚と異常受精胚の判断について説明しました。今回は患者さまからお預かりした胚(受精卵)が、どのように培養されているのか説明します。
 当院では基本的に、受精から胚盤胞までの成長段階に応じてCOOK Medical社の三種類の培養液を使い分けています。これらの培養液は女性の卵管や子宮内の体液を参考につくられており、胚の成長とそれに伴う代謝機能の変化に合わせて、胚に必要な栄養が供給されるようになっています。以下にそれぞれの培養液の特徴を簡単に記載します。
 
① 媒精用の培地(商品名:SYDNEY IVF FERTILIZATION MEDIUM)
   卵子と精子を受精させる際に用いる培地です。
   受精前の卵子と精子の代謝機能に合わせ、エネルギー源としてグルコースが多く含まれています。

② 分割期胚用の培地(商品名:SYDNEY IVF CLEAVAGE MEDIUM)
   受精した日から3日目(8細胞期胚)までの胚の成長に適した培地です。
   エネルギー源としてピルビン酸が多く含まれています。胚を大きく成長させるため、
   ①の培養液に比べアミノ酸の種類も多く添加されています。

③ 胚盤胞用の培地(商品名:SYDNEY IVF BLAST MEDIUM)
    8細胞期胚から胚盤胞までの成長に適した培地です。
   胚盤胞の形成・分化に必要なエネルギー源として、高濃度のグルコースが含まれています。

 
 

 採卵手術で体外に取り出された卵子は、精子と受精させて子宮に移植する日まで(あるいは凍結保存する日まで)直径3.5cmほどの小さなプラスチック容器(ディッシュ)の中で培養します。ディッシュの中には、20μl培養液でつくられた小ドロップが最大で8個並んでいます(左図)。これらは胚のための個室であり、ひとつひとつの成長過程を確認・記録しやすいように1ドロップにつき1個の胚が入っています。また、乾燥による培養液の濃度変化を避けるため、ディッシュ内は右図のように清潔なミネラルオイルで満たされています。オイルにはドロップ同士を仕切る役割もあり、複数の胚が移動・混在してしまうことを防いでいます。ディッシュは37℃・炭酸ガス濃度6.0% ・ 酸素ガス濃度5.0% ・ 窒素ガス濃度89%に設定されたインキュベータ内に静置し、胚は最長で7日間培養しています。
 
 次回の培養室だよりでは、卵が受精してから胚盤胞に成長するまでの過程をご説明します。
 
荒川

 

   受精確認~正常受精と異常受精~
 


 今回は、顕微授精や媒精の後に卵がどのような過程を経て受精するのかを説明させていただきます。

 採卵して顕微授精か体外受精(IVF)を施行した日の夕方ごろ、受精卵には第一極体とは別に染色体を含む小さな細胞が新たに出現します(第二極体の放出)。また、精子侵入部位がポコンと膨らみ(fartilization cone:fc の出現)、それに加えて、卵細胞内の精子が入ったあたりから顆粒状物質の放射状移動(flareの発生)が生じます。



 そして、採卵した翌日の朝ごろには、正常に受精している胚には『前核』と呼ばれる透明に丸く抜けたように見えるものが女性由来の1個と男性由来の1個、あわせて2個確認出来ます。この前核が3個以上確認されたり1個しか確認できなかったりする胚は異常受精胚と判断し、基本的に治療には用いていません。

 異常受精となる原因は、体外受精か顕微授精かによっても異なりますし、胚1つ1つそれぞれ異なるため断定できるものではありません。一例をあげるとすれば、多前核ならば第2極体がうまく放出されなかった可能性や、体外受精(IVF)で精子が2匹以上侵入した可能性が考えられますし、1前核の場合は、正常に受精しているにもかかわらず前核が融合し始めていたため1前核に見えた可能性や、正常な受精が成立するためのメカニズムのなんらかの不具合で1個の前核しか出現しなかった異常受精である可能性などが考えられます。
 
 ところで、先ほど異常受精の胚は基本的には治療に用いることはないと書かせていただきました。しかし、最近になって体外受精(IVF)由来の1前核胚に関しては、胚盤胞まで成長すれば健常児を出産する可能性があるという報告が出てきています。
 そこで、現在当院では体外受精(IVF)により1前核胚が生じた場合は、ご説明させて頂いた上で胚盤胞まで培養し、ご希望があれば胚盤胞移植・凍結融解胚移植を施行しています。



培養部 北森

 

    顕微授精について(5)~精子の注入~
 

 


 

 今回の培養室だよりでは、精子を卵子へ注入する手順をご説明いたします。顕微授精は培養士が倒立顕微鏡をのぞきながら、マイクロマニュピレーターと呼ばれる機械を操作することで行われます。

まずは固定用ピペットを用いて卵子を決められた向きに固定します(図中①)。このとき、針を刺すことによって卵子の核を傷つけてしまうリスクを減らすため、当院では第一極体が12時の向きにくるように卵子を固定しています。次に不動化処理(前回の培養室だよりをご参照ください)によって受精しやすい状態にした精子を注入用ピペットの中へ吸い込み、卵子とピペット先端のピントをずれがないようにしっかりと合わせます(図中②)。続いてマイクロマニュピレーターを慎重に操作し、注入用ピペットを3時の方向から卵子に刺して精子を注入します(図中③)。最後に、注入した精子を一緒に引き抜いてこないように注意しながら、ゆっくりとピペットを抜きます(図中④)。
 顕微授精には正確な操作が求められるのはもちろんのことですが、卵の受精にはその他にも pH ・ 光 ・ 温度 ・ 浸透圧などの環境因子が影響すると言われています。そのため、上記の顕微授精操作を迅速に行い、卵にとって最適な環境に整えられている培養器の中へなるべく早く戻してあげることが重要といわれています。

 次回は過去にご紹介した『媒精』と『顕微授精』によって、卵が受精できたかどうかを確認する方法についてご紹介します。
 

培養部 荒川